✿2025年5月
①【介護が必要になったとき、介護する人のためにできること】
ある日突然、大切な家族の体調や認知機能の変化に気づき、「もしかして介護が必要かもしれない」と感じる瞬間があります。
けれど、そのときにまず押し寄せるのは、「私がやらなきゃ」「どうすればいいの?」という、介護する側の不安や戸惑いです。
介護の道は、決して一人で抱える必要はありません。
まず最初の一歩として知っておきたいのが、「介護保険制度」の存在です。
介護保険は、40歳以上の人が支払う保険料をもとに、高齢者の介護を社会全体で支える仕組みで、65歳以上であれば原則誰でも介護認定の申請が可能です(40〜64歳は特定の病気が対象)。
せっかくの権利、「介護保険制度」を活用しましょう。
最初にすべきことは、対象となるご本人が住んでいる市区町村の窓口で、要介護認定の申請をすることです。
申請後、調査員による聞き取りと医師の意見書をもとに、要支援1・2から要介護1〜5までの判定がされます。
その結果を受けて、ケアマネジャー(介護支援専門員)が、利用者様やご家族の希望をうかがいます。
ご家族からの希望の多くは、「食事や水分がきちんと摂れているか気になる」「布団の上げ下ろしが心配」「トイレは失敗なくできているか」「薬は間違えずに服用できているか」「このままでは認知症になるのでは」といった様子見的な内容や、 「現在の仕事や家庭との両立ができるか不安」といった今後の生活に関する不安など、抽象的で多岐にわたります。
これらをためらわず、まずは思いをきちんとお伝えください。
そのうえでケアマネジャーが、それらを踏まえて必要な支援や介護を整理し、「ケアプラン(介護計画)」を立ててくれます。そこから介護サービスの利用が始まります。
実際に使えるサービスとしては、次のようなものがあります:
• デイサービス(通所介護)
• ホームヘルプ(訪問介護)
• ショートステイ(短期入所)
• 訪問看護
など、多様なメニューが用意されています。
費用面についても、「介護保険適用」であれば、原則1割〜3割の自己負担で済みます(所得により異なります)。
さらに、収入や介護度に応じて、「高額介護サービス費制度」や「特定入所者介護サービス費(補足給付)」といった支援もあります。
もちろん、サービスを受けている途中で不都合があれば、内容を見直して変更することも可能です。
とはいえ、制度を知っていても「こんなこと相談していいのかな?」と戸惑う方も多いでしょう。
そんなときは、地域にある「地域包括支援センター」や「市役所の介護保険課」に気軽に相談してみてください。
これらの窓口では、制度だけでなく、介護する側の心のケアや、家族間の調整についてのアドバイスを行ってくれる場合もあります。
介護を「我慢や自己犠牲で頑張ること」と捉えると、心も身体も持たなくなってしまいます。
だからこそ、「制度を使うこと=甘えではない」「頼れるところは頼っていい」という気持ちを持っていいのです。
介護は、いつか誰かにとっての「自分ごと」になります。
だからこそ、不安を抱えたままひとりで背負わず、使える制度や人を活用して、 できるだけ心穏やかに向き合える介護を目指していきたいですね。
